あの出版社やメディアの仕事がしたい!クリエイターが夢の仕事に近づく具体的な方法【実例と注意点を紹介】
今回はわたしが東京でデザイナーとして働いている時に実際に見た、とあるカメラマンがあこがれの雑誌で仕事をするためのアクションの起こし方をご紹介します。
実例に加え、そのカメラマンがとった方法の良かった点と注意点を分析。記事の最後では、将来目標のメディアの仕事をするためにあなたが今すぐ出来ることもまとめました。
本記事はすでにある程度キャリアがある方向けの内容です。また、カメラマンだけでなく、イラストレーターやライターの方でも応用できる内容になっています。
では、早速見ていきましょう。
クリエイターが夢の仕事に近づく具体的な方法【実例】
ちょっと複雑なので、先に登場人物を簡単に紹介します。
- 雑誌1:とある専門誌。「この雑誌の仕事がしたい」という人が後を絶たないメディア。カメラマンもこの雑誌を目標にしている。
- 雑誌2:雑誌1と同じ出版社が発行する、1とは別ジャンルの雑誌
- 雑誌3:雑誌1とはジャンルも出版社も関係のない専門誌
- カメラマン:雑誌3で仕事をするフリーカメラマン。雑誌1の仕事がしたい
- 社長:雑誌1、2、3をはじめとした複数の雑誌や書籍を手がけるデザイン事務所の社長兼アートディレクター
- 編集Yさん:雑誌2(雑誌1とは別ジャンル)の編集者
- わたし:デザイン事務所の社員
雑誌3の仕事をしているカメラマンが、雑誌1(目標の雑誌)と雑誌3の仕事をしているデザイン事務所の社長に、雑誌1の関係者を紹介してもらえないかと連絡が入りました。
後日、カメラマンは雑誌1に掲載されることを想定した写真を中心としたポートフォリオを持参して、デザイン会社の社長に会いに来ます。
共通の話題である雑誌3の仕事の話もしつつ、社長はポートフォリオを見ながらカメラマンのやる気や写真のクオリティをチェックし、雑誌1に紹介するにふさわしい人物かどうか確認します。
雑誌1は人気媒体のため競争率が高く、紹介したとしてもすぐに仕事が来る可能性はまずないことを社長がカメラマンに説明します。同時に、雑誌1と同じ出版社が発行する雑誌2の編集Yさんに話を持ちかけることを提案。
カメラマンは社長の提案を受け入れ、社長が編集Yさんにカメラマンの話を持ちかけました。後日、カメラマンは雑誌2の編集部から撮影の仕事をもらいました。
あこがれの人気メディアの仕事に近くためのポイント
今回の例では、カメラマンはコネクションをうまく利用してあこがれの雑誌の仕事に近づくことに成功しました。わたしが考える、カメラマンの行動で良かった点はこちらです。
- 自分と共通点があり、かつ目標の雑誌と深く接点のある人に相談したこと
- 目標の雑誌を想定した作品入りのポートフォリオを作っていたこと
- 雑誌1に関わるチャンスを得るため、雑誌1と同じ出版元の雑誌2の仕事から始めたこと
ポイント①自分と共通点があり、かつ目標の雑誌と深く接点のある人に相談したこと
今回の例でいちばんのポイントは、名前を出せばすぐにわかる共通の接点「雑誌3」があったことです。雑誌3の名前を出すことで、直接会ったことのないデザイン会社の社長と話すチャンスがうまれました。
デザイン事務所としても、面識がないとはいえ共通の媒体で仕事をしているカメラマンからの相談を無下に断るわけにはいきません。
また、雑誌3を見れば会う前にカメラマンがどんな写真を撮っているか仕事ぶりを調べることもできます。
もしカメラマンが何の接点もないデザイン事務所に声をかけていたら、きっと会ってくれないでしょう。
もしあなたが他のメディアにチャレンジしたいなら、目標のメディアに関わっている人で、あなたと接点がありそうな人を片っ端から探してみましょう。
ポイント②目標の雑誌を想定した作品入りのポートフォリオを作っていたこと
カメラマンはデザイン事務所の社長との相談のため、目標の雑誌で使われることを想定した写真入りのポートフォリオを作っていました。
「雑誌」という共通点があるとはいえ、ジャンルが違えば求められるテクニックも違ってきます。
デザイン事務所の社長も、取引先である雑誌1に実績のない人やスキルの不足した人を紹介するわけにはいきません。
社長(アートディレクター)は、カメラマンが雑誌3とは違う見せ方や撮影方法が求められる雑誌1に紹介できる人材なのか見極める必要がありました。そしてカメラマンのポートフォリオを見て、社長は雑誌1の仕事が出来そうだと判断しました。
- これからやりたい仕事を想定した作品
- 現在の仕事に関連した作品
- ①、②とはテイストの違う作品
①はもちろんですが、②や③も重要です。出版社にもよりますが、ジャンルの違う複数の雑誌を抱えている場合は、様々な撮り方に対応できる方は複数の編集部と仕事ができる場合も多いですし、紹介する側としても紹介しやすくなります。
編集者に「作品の幅が広く、マルチに対応できそうな、いざという時に頼れそうなカメラマン」として覚えてもらえれば、単発の仕事などで急に人出が必要になった時に声をかけてもらえる可能性は高くなります。
また「あの写真もこの写真も全部あの人に任せて大丈夫!」となれば、編集者にとっても仕事がしやすくなり、ついついあなたに仕事を発注するようになりますよ。
ポイント③雑誌1に関わるチャンスを得るため、雑誌1と同じ出版元の雑誌2の仕事から始めたこと
「同じ出版社とはいえ、目標じゃない雑誌2の仕事を受注したことは成功なの?何だか遠回りな気がするけど」と思った方もいるかもしれません。
率直に言うと、人気メディアですぐ仕事ができる確率は限りなくゼロに近いです。
- 売り込んでくる人が多く、基本的にいつも人手は間に合っている
- 人手が間に合っているため、スキルのない人や素性のよくわからない人と仕事をするメリットがない
- 競争率の高さゆえ、クオリティの高い仕事が求められる
それでも「あこがれのあの媒体で絶対に仕事をしたい!」という強い意思があるなら、一見遠回りに見えても、ジャンルは違うけど同じ出版元の雑誌2の仕事は引き受ける価値があると思います。むしろ仕事がもらえれば大成功じゃないでしょうか。
「わたしがなぜ大成功だと思うか」は、出版社の内部事情も絡んでくるので、もうちょっと詳しく説明しますね。
同社内の違う媒体と仕事をすると目標メディアの仕事をするチャンスが何倍もアップ
目標の雑誌1とは一見関係のない雑誌2の仕事を引き受けるメリットについて、もう少し考えていきましょう。
- お付き合いのある編集部員が目標の雑誌編集部に異動する可能性あり
- 同じ会社の仕事をしている人には編集者も安心して依頼しやすい
メリット①お付き合いのある編集部員が目標の雑誌編集部に異動する可能性あり
大きい会社ほど部署の異動はつきものです。出版社では同じ「雑誌」というくくりなだけで、実際は全く違うジャンルの編集部に異動になることは珍しくありません。
目標とは違うジャンルの雑誌の編集部員でもつながりを持ってさえいれば、ある日その人が目標の雑誌の編集部に異動になった時、あこがれの雑誌の編集部員とつながりができます。
あこがれの雑誌の仕事から声をかけてもらえる確率は、間違いなくアップしたと言えるでしょう。
メリット②同じ会社の仕事をしている人には編集者も安心して依頼しやすい
雑誌の編集の仕事は基本的にいつも忙しいもの。編集の仕事だけでも忙しいのに、もし急に人手が足りなくなった時でも人材はパパッと探したいし、はじめて一緒に仕事をした人に請求書の送付先などを教えるのは地味に面倒な仕事です。
その点、同じ出版社の別の編集部と一緒に仕事をしている人には圧倒的に声をかけやすくなります。実際、デザイン事務所も同じ出版社の他部署の方から突然お声がけいただくことは多いです。
- 仕事のクオリティは雑誌ですぐに確認できるし、人物像も担当編集部員に聞けて安心
- 同じ出版元という共通点で声をかけやすい
- 雑務に関しても他編集部との共通点は説明する必要がなく、すぐに仕事を始められる
また、一見つながりが見えない人たちでも「同期入社だから」「研修で一緒だった」など様々な理由でつながっていることもしばしば。
あなたが一緒に仕事をしている編集部員が、実はあこがれの雑誌の編集部員と飲み友達かもしれません。何気なく話している時に、あなたのことが話題になる可能性も大いにあります。
ある雑誌で結果を出せば、同じ出版元の他雑誌の編集部にも必ず注目されます。目標の雑誌の仕事がすぐ出来なくても、まず他雑誌の仕事で認められれば、ある日突然声をかけられる可能性が格段にアップしますよ。
あこがれのメディアから仕事をもらいやすいタイミング
もちろんメディアや編集者が、それまでお付き合いのない方に声をかけることが多いタイミングはいくつかあります。今は空きがなくても、このタイミングを利用すればうまく繋がりが持てるかもしれません。
編集長が変わる時(=連載企画や誌面デザインを刷新する時)
雑誌が大きく変わるタイミングは、編集長が変わるときです。編集長が変わるタイミングで連載コラムなどのページ企画や誌面デザインなどを大幅に見直すことはよくあります。
つまり、リニューアルの度合いにもよりますが、ここで仕事を切られる人と新しく仕事を受注する人が出てくるわけです。
編集者にとっても、自分でやりたかった企画を提案するいいチャンスです。そして「この企画ならあの人と一緒にやりたい」と編集者に思ってもらえたなら、きっとあなたに声がかかるはずです。
急な書籍やムックの発行時
出版社はある程度年間発行スケジュールを決めていますが、中には急に制作が決まる書籍やムックもあります。そんな仕事はたいていスケジュールもタイトで、しかも突然決まった仕事なので普段お付き合いのある人のスケジュールはすでに埋まっていることがほとんどです。
そんな猫の手も借りたい状況になった編集者から「そういえばあの人に紹介してもらった〇〇さんっていたなあ」と声をかけてもらえる可能性が高くなります。
コネを使ってあこがれのメディアの仕事に近づく時の注意点
あこがれのメディアの仕事に近づくためには、コネクションは強力な武器になります。が、その強力さゆえの注意点もあります。
- 誰のコネクションを使うか慎重に選ぶべし
- コネクションに期待しすぎない
- 紹介された仕事はよほどの理由がない限り断らない
- 紹介先との仕事に気を取られて紹介元との仕事をおろそかにしない
注意点①誰のコネクションを使うか慎重に選ぶべし
「わたしを紹介してもらえませんか?」と「誰に」頼むかは重要なポイントです。知り合い程度の関係しかない人に頼んでも、成果はほとんど期待できません。
反対に強固なコネクションがある場合はすぐに成果が期待できるかもしれませんが、あなたが紹介元に気に入られなかったりマイナスイメージを与えたりしてしまうと、紹介先にもネガティブな印象を持たれる事もあります。
より可能性の高い見返りを期待するなら、相応の人物にアプローチすべきです。目的のメディアとビジネスの関係で長いお付き合いがある方がベストではないでしょうか。
「この人なら良さそう!」と思う人が見つかったなら、スケジュールに余裕がありそうなタイミングを狙って相談してみましょう。
できれば「その人があなたの相談を断りにくい状況を作ってから」話を持ちかけるのがオススメです。
注意点②コネクションに期待しすぎない
「この人に紹介してもらえるんだから、絶対次のステップに進めるはず!」とあまり高望みしすぎるのはよくありません。
▼先ほども触れましたが、人気メディアであればあるほど競争は想像以上に激しいと考えるべきです。
- 売り込んでくる人が多く、基本的にいつも人手は間に合っている
- 人手が間に合っているため、スキルのない人や素性のよくわからない人と仕事をするメリットがない
- 競争率の高さゆえ、クオリティの高い仕事が求められる
どんなに強力なコネクションがあったとしても、たまたまタイミングが悪い場合もありますし、編集部から実力が伴っていないとか、作品のテイストが媒体と合わないと判断されることもあります。
「何か動きがあったらラッキー!」くらいに考えておく方がいいと思います。
注意点③紹介された仕事はよほどの理由がない限り断らない
労働環境が劣悪すぎるなど、よほどの理由がない限り、コネクションを使って紹介してもらった仕事は断らない方がいいでしょう。
もし「わたしがやりたい仕事じゃないから」と言って紹介された仕事を断ってしまっては、せっかく紹介してくれた人の顔が立ちませんし、せっかく見つけたそのコネクションはもう二度と使えなくなってしまいます。
また、紹介元も「あなたならきっと結果を出すはず」と見込んだ上で紹介してくれているのですから「必ず結果を出す」意気込みで仕事に取り組みましょう。
注意点④紹介先との仕事に気を取られて紹介元との仕事をおろそかにしない
もしコネをいかしてあこがれの仕事ができるようになったなら、それは本当に嬉しいことです。
でもここで新しい仕事にワクワクしすぎて、あなたとあなたを紹介してくれた人との接点(この記事でいう雑誌3の仕事)をおろそかにしないよう気をつけましょう。
紹介先との新しい仕事が楽しみで仕方がないのはわかりますが、元からあった仕事をないがしろにしてしまうと紹介元に迷惑がかかりますし、むしろ悪い印象を与えかねません。
「本当なら将来また使えそうだったコネクションが、いつの間にか消えてなくなっていた」なんてことのないよう、紹介元とのつながりも大切にしたいですね。
将来目標のメディアの仕事をするためにあなたが今すぐ出来ること
今はまだでも、将来的にあの雑誌・あのメディアの仕事がしたいと考えている特定のメディアがあるなら、早速行動にうつしてみましょう。
目標のメディアの情報を定期的にチェックする。リニューアルなど大きな動きは要チェック
あこがれのメディアの動向は、定期的にチェックしましょう。数年経つと同じメディアでも方向性がガラリと変わってしまったり、最悪の場合は閉鎖においこまれてしまうものも珍しくありません。
- なぜそのメディアが好きなのか?全体の方向性が好き?または一部の企画だけが特に好き?
- 好きならたとえ単価がどんなに低くてもそのメディアに関わりたいのか?別のメディアで似た内容かつ報酬が高い仕事がある時はどうしたいか?
など、あなたが本当に目指すべきメディアかどうか定期的に見直すのも大切です。
- (有料の媒体なら)値段は変わっているか。変わっているなら、いつ&いくらずつ変わっているか。値段が変わっていない場合はページ数や連載企画が減っていないかチェック
- 大幅な誌面リニューアルが頻繁に行われているか。短期間でコロコロ変わる=安定していない証拠です
- 広告の数とスポンサー企業名をチェック。いつも広告を出していた企業の名前が突然なくなったら要注意
- クレジットや編集後記をチェック。面白い企画や好きな企画に絡んでいる人は誰か確認しておく
- カメラマン、イラストレーター、デザイナー名などをチェック。同じ人や会社が他のどの媒体とどんな仕事をしているか調べてみると、あなたが知らなかった良いメディアに出会える可能性あり
ポートフォリオサイトをつくる
持っていない人は今すぐポートフォリオを作りましょう。
実際に編集者に会う機会があれば紙のポートフォリオもいいですが、編集者があなたのことを突然思い出して作品を見たいと思った時のために、ポートフォリオサイトがあった方が有利です。
コードを書かなくても見栄えのいいポートフォリオサイトが簡単に作れるサービスもたくさんあります。
- アドビポートフォリオ:アドビクリエイティブクラウドに加入している方なら無料で利用できるポートフォリオ作成サービス。1アカウントで最大5つまでポートフォリオが作成できるので、用途に応じて複数のポートフォリオを使い分けることもできます。
- Studioはモリサワフォントが自由に使えるウェブサイト作成サービス。デザインから公開まで、コードを書く必要がありません。有料版にすればSTUDIOバナーを非表示にできます。
- Elementor:ワードプレスを使ったウェブサイトをコードを書かずにデザインするためのプラグイン。シンプルなポートフォリオサイトなら無料版でじゅうぶん使えます。
- Wix:コードを書かずに簡単に美しいホームページが作成できるサービス。日本語のチュートリアルも充実しています。無料プランで利用する場合は広告が入りますが、有料プランなら広告を非表示にできます。
▼ポートフォリオサイトを作ったら、実行したいポイントはこちらです。
- メールの署名にポートフォリオサイトのURLをのせておく。編集者があなたの名刺を保存しているとは限りません
- ポートフォリオサイトは定期的にチェックする。作品の見せ方も重要ですが、リンク切れがないかチェックしたり、プロフィールが古い情報になっていないか見直すのも大切です
- 外出先でもチェックできるよう、スマホ対応のポートフォリオサイトにする