ローソンの新パッケージデザインについて考える【多言語化より原材料の英語表記を】
まずはじめに、わたしは今回話題になっているローソンの新パッケージがあまり好きではありません。
▼このツイートの通り「日常づかいする製品へのアクセス難度が急上昇した」と感じるからです。
わたしはコンビニに「デザイン性」を求めていません(もちろん選べるならあったほうがいいですが)。
- 便利さ
- 気軽さ
このいずれかがデザイン性を追求するあまりに損なわれてしまったら、わたしにとっては「コンビニに行く意味」がなくなってしまいます。
今回は賛否両論あるローソンの新パッケージについて、ネットで見つけた意見を紹介しつつ、ベジタリアンの主人をもつデザイナーの私の考えも深掘りして書いていきたいと思います。
では、早速見ていきましょう。
ローソンの新パッケージデザインについて考える【多言語化より原材料の英語表記を】
▼わたしが今回の新パッケージで残念に思っているのは、主に以下の点です。
- 商品を購入するまでに余計な時間がかかりそう
- 間違えた商品を購入する人が増え、顧客満足度が下がりそう
- コンビニ店員や配送の人の手間が増えそう、わかりにくそう
商品を購入するまでに余計な時間がかかりそう
まず、目的の商品を見つけるのに今まで以上に時間がかかりそうなのが問題です。今まですぐに買えていたものならなおさら、購入の際に手間が増えるのはあまりいいものではありません。
さらにこのコロナ禍でちょっとでも感染リスクを避けたい今、買うものだけ手に取りたいのが本音。が、わざわざ商品を手に取らないと判別できないのは大きなマイナスです(デザイン開発中はコロナは想定外だったはずですが)。
中身が見えづらく、判別しづらい商品
▼こちらは6品目の野菜炒め。中身が偏った結果、小窓から見えるのがほぼもやしとキャベツのみになってしまっています。
商品名が見えないケースも
上の棚に隠れてしまって、長身の方には商品名が見えない場合もあるようです。写真やイラストが大きかったり、ハッキリ色分けされたりしていればまだわかりやすいのですが…。
狭い店舗では客がスムーズに流れにくくなる可能性も
ゆったりした店舗ならまだしも、人一人通るのがやっとの狭い通路の店舗にとっては大きな問題になりかねません。
ひとりが商品を確認するために立ち止まり、通路を塞ぐ時間が長くなったら…他のお客がスムーズに買い物できなくなるかもしれません。
目的の商品がすぐに買えないのは地味にストレスです。
間違えた商品を購入する人が増え、顧客満足度が下がりそう
このパッケージデザインだと、間違った商品を購入する人が増えそうな気がします。
コンビニを利用するのは若い人だけではありません。お年寄りや外国人も利用します。ほとんど時間がない中で、目的の商品だけをすぐに買いたい人もたくさんいるはず。
様々なシチュエーションで幅広い年代の方が日常的に買い求める商品で、視認性よりデザイン性を取るのはあまりいい方法とは思えません。
▼カレーのパッケージ。旧デザインの方がパッと見て区別がつきますよね。
▼納豆もうっかり種類を間違えてもおかしくないと思います。
「慣れれば大丈夫じゃない?」と思うかもしれません。でも必ずしも全てのお客が慣れるまで我慢してくれるとは限りません。近くに別のコンビニやスーパーがあれば、そちらに流れる可能性もあります。
またこのデザイン展開だと、たとえば新商品が出てきたとしても非常にわかりにくくなります。周囲の商品に紛れる可能性大です。
コンビニ店員や配送の人の手間が増えそう、わかりにくそう
このパッケージはお客様だけではなく、コンビニの店員や配送の方にとってもわかりにくく手間が増えそうな商品だな、と感じました。
コンビニって1日に何回も商品が補充されますよね。このデザインだとどれがどの商品か確認するのに手間取ったり、商品陳列の際にも間違った棚に商品を補充するといったトラブルが増えるのではないでしょうか。
また最近は外国人の店員をよく見かけますが、日本人でも間違うほど酷似したパッケージを見分けつつ商品を補充できるのでしょうか?
「SNS映えするパッケージ」「冷蔵庫がスッキリする」との声もあり
▼一方でデザインの統一感は抜群で「インスタに投稿したい!」と思わせるかわいいパッケージ展開だと思います。
▼このパッケージが、自宅の冷蔵庫では困らないしかわいい!という声もあります。
確かに購入して自宅に持って帰ってしまえば「どれがどれだかわからない!」ということはなさそうです。
とかく物があふれてゴチャゴチャしがちな場所では、このスッキリしたデザインが歓迎されるのもうなづけます。
外国人を意識するなら、多言語化ではなく原材料の英語表記を
パッケージでの心づかいは商品名の4カ国語(日本語のほか英語、中国語、ハングル)にも表れています。「ローソンで買い物をする外国人のお客様が商品を選びやすいよう、お客さまへのやさしさを意識して議論した結果、多言語の表記に踏み切りました。パッケージへの英語表記は2015年から進めており、一部の商品パッケージへの4カ国語表記については、2020年3月から商品ごとに順次切りかえています」
「かわいい」と話題のローソンの新パッケージ、デザインは「nendo」 コンセプトを聞いてみた
観光客や日本在住の外国人を意識するなら、多言語化より原材料の英語表記の方がいいのではないでしょうか。
当方、主人が日本語の読めないベジタリアンでして、コンビニに行くたびに私が原材料をチェックしています。
たとえば「ベジタブルカレー」と書いてあっても、肉が入っていることがあります。日本人が原材料をチェックできればいいですが、日本語を少し勉強してきただけの観光客なら「肉が入っていない」と思い込んで買ってしまうでしょう。
もし原材料の英語表記があれば、ヴィーガン、ベジタリアン、アレルギー持ちの外国人にとってこれ以上助かることはありません。外国のレストランのメニューでは多くの場合、材料を明記しています。
英語表記さえあれば、他の言語話者も辞書で自分の言葉に翻訳しやすいはずです。
何かと比較対象にあげられる無印良品のパッケージは写真が大きい、または中身がハッキリ見える
▼ローソンの新パッケージとよく比較されているのが、無印良品のパッケージです。
- 印刷部分の面積が狭く、中身がハッキリ見える
- 中身が見えない商品は写真が大きい
ペットボトルの飲み物はちょっとわかりにくいかなと思いますが、基本的にはシンプルかつわかりやすいデザインになっています。
セブンイレブンのパッケージはより「わかりやすさ」を追求
▼競合の一つ、セブンイレブンのパッケージデザインはローソンと真逆を行っています。
旧デザインと比べると、新デザインはさらにシンプルで力強いデザインになっています。
- 写真が大きくなった
- 文字が太く、大きくなった
デザインだけを比べると、セブンイレブンよりローソンの方がおしゃれな雰囲気です。でも、わかりやすさを比べるならセブンイレブンに軍配が上がります。
テーマパークや観光地のギフトショップ内ならありなデザイン
この新パッケージ、日常的に利用するコンビニではあまり…と思いますが、テーマパーク内や観光地など、非日常を楽しみたい場所にあるお店ならありなんじゃないでしょうか。
▼たとえばこちらは宮古島の雪塩の商品と店内のディスプレイです。雪塩の他にも雪塩を使ったお菓子や化粧品などのお土産を販売しています。
全体的に青と白をベースとしたさわやかなデザインで統一されています。パッと見てどれがどんな商品かすぐに識別するのは正直難しいでしょう。
ですがターゲットはコンビニとは違い、比較的ゆったり買い物する時間がある宮古島の観光客です。
商品ごとに独立したスペースをもうけ、詳細を説明するスタッフやディスプレイ、試食・試供品で商品について理解を深められれば、多少パッケージが似ていても「わかりにくい!」と不満の声は出にくいはずです。
むしろ統一感のある商品と店内のデザインで「どこか特別な場所に来た感」を演出できます。
デザイナー批判は論点がずれる可能性も
新パッケージについて、様々な議論が巻き起こっています。
▼中にはデザイナーの生活スタイルや過去のインタビューについて触れ、個人攻撃に近いコメントも垣間見得ます。が、それは論点がずれているかもしれません。
- 新パッケージデザインの方向性はローソンからの依頼で、デザイナーは依頼に忠実にデザインしたのかも
- 企画段階では今あびている批判を回避できている案もあったが、最終的にはローソン側がこの新パッケージを選んだのかも
この新パッケージデザインが決まるまでのプロセスは、外部の人間にはわかりません。
ただ、ローソンのリブランディングのような売り上げを大きく左右しかねない大きなプロジェクトに、デザイナーだけの意見が反映されているとは思えません。
デザイナーの個人攻撃に終わってしまうと、本当の問題点を解決できなくなってしまうのではないでしょうか。